
「私たちの万博」
「私たちの万博」は、1970年から54年後、大阪で再び万博が開催されている今、そのレガシー、機能、その組織方法を問い直す。万博のアーカイブを芸術を通して展開することで、「過剰」で「エリート」らしく見える万博に対して、「謙虚」で「万人のための」代替案を提案し、万博の未来を想像する。
私たちは、二つの大きな視点で万博を捉え直すことを試みる。一つ目は、様々な国々が植民地化され、恒常的な戦争状態にある現在において、「独立した万博」を想像すること。二つ目は、「万博」という芸術形式が内包する、「未来の社会」という理想を、独立した、批評的な、労働者的な方法で問い直すことである。
ここ数年、ガザは国際法を無視したイスラエル軍に砲撃され続けており、それに対して日本では、現代美術シーンの一部で、パレスチナ支援の動きが高揚している。ベトナム反戦運動のさなかにあった1970年万博と、パレスチナ支援気運が高まる2025年万博の間には類似点が見出せるはずだ。
また、万博の候補都市が提案するテーマは、開催国の産業振興とアイデンティティのプロモーションでもある。私たちは、「未来の社会」に関連する、制度のパラドックスを明らかにしようと試みる。技術革新政策やアイデンティティに関する言説が包含する、暴力的で抑圧的な要素に、哲学的な視点から疑問を投げかけるものでもある。技術の進歩は、資本主義社会において、資本蓄積の原理を支えるものだ。だからこそ、私たちは、技術そのものがもたらす、倫理的・政治的帰結について、再考しなければならない。
展覧会概要
会場
三和市場 | 〒660-0871 兵庫県尼崎市建家町82
怪獣シアター | 〒660-0871 兵庫県尼崎市建家町89
染織工房 tonari 運営 | 〒660-0871 兵庫県尼崎市建家町89
会期
三和市場
2025 年 7 月 12 日(月)~27 日(日)
怪獣シアター
2025年7月19日(土)~20日(日)
開廊時間
三和市場
月~日:9:30~19:30
怪獣シアター
2025年7月19日(土)~20日(日) : 12:00~21:00
染織工房 tonari 運営
2025年7月26日(土)~27日(日) : 9:30~21:00
入場料
三和市場での現代アートの展示 : 無料 (ドネーション)
怪獣シアターでの舞台芸術プログラム : 一日中3000円
アーティスト
有吉玲、伊阪柊、飯沼 洋子、黒田健太、黒田典子、川口哩央、しばた みづき、東畠孝子、太湯雅晴、前田真治
ゲバルト団体
キュレーション
アレクサンドル・タルバ
サポート
平居香子、アントワーヌ・ハルプク
太湯雅晴、前田真治
森谷壽(協同組合三和市場商店街理事長、マルサ商店店主)、怪獣シアター、北川星子(染織工房 tonari 運営)
特別協力
佐野未帆
ウェブサイト
展覧会
伊阪柊、『Remote ∵ Workoм』(リモート∵ワークム)、リアルタイムシネマ、2025年
場所に限定されず働くことができる一方そこには監視技術と雇用者/被雇用者間の相互不信のコリドーが静かに造設されている。ありとあらゆる事柄を無限遡行的(Infinitely Regressive)にシミュレートする仮想環境『IR-BIM』を使ってメガストラクチャ設計の労働に従事する中で、認識の跳躍的確率過程「ゼノン・サプライズ」が、無限遡行空間を反転させた「AIR-BIM」をコリドー内に作り出す。建造物の対消滅で生じたコリドーの裂開から、遥か遠くにあるその場所の空気が流れ込む。
川口理央、『アーマーガサキングα 影と光 破壊と再生』、映像作品、2025年
展示場所となっている三和市場には、ガサキングαという怪獣がいる。エプロンや鎧、なにがしかの「アーマー」をつけるとそれはアーマーガサキングとなり、尼崎を表象するそのものとなる。今回の映像では、エプロンをつけ、家事労働に準じるアーマーガサキングαが、自らの労働を破壊し再生する(自ら準備した食べ物を、自分で食べる)様子を描く。怪獣、市場、家事労働にある影の破壊とガサキングαの再生を目論む。
東畠孝子、『Beyond the mirror』、インスタレーション、2025年
作品について:鏡の反射や写り込みを使ったインスタレーションを発表予定。観賞者の内面に光を当て、展覧会全体の意義を問いかける様な作品を目指す。また来場者が2箇所にまたがる展示会場を往来することで、2空間の作品が共鳴し合う構造となる。
太湯雅晴、『1970:わたしたちの万博』、マルチモニター、万国旗、2025年
1970年、日本万国博覧会は「人類の進歩と調和」を掲げ、未来を祝う壮大な祭典として開催された。当時を体験した人々が今なおその記憶を強く語るこの万博は、後の世代にとっても提示された未来像の鮮烈さを想像させるに十分である。本プロジェクトでは、「1970年」を過ごした人々にその当時をインタビューする。万博に通った人や全く別の場所にいた人など、その多様な視点を通じ、思い描かれた未来、あり得たかもしれない未来の姿を描く。
前田真治、『いのちを嗜む』、インスタレーション、2025年
「いのち輝く未来社会のデザイン」という目標と、8つのテーマを基に、今回の万博は創り上げられている。叡智と技術、そして財が集約され、華やかに彩られた夢洲を対岸に望みながら、そのいずれも持ち得ぬ私が、同じテーマを網羅するであろう物事を模索し、設置するのは愉快だと思った。天地宇宙との共鳴、未来への憧憬、人との繋がり、類まれなるバーチャル性能、仮説と仮設、なんか色々。「意匠を削ぎ落とした同じものは何なのか?」を、ただ置く。
イベント
三和市場
7月12日(土) 17:00
しばた みづき、『かいてんするせいめい』、造形/観察するパフォーマンス、2025年
7月13日(日)
ゲバルト団体、『スイカ・デート』、パフォーマンス、2025年
出演者 : 平居香子、アレクサンドル・タルバ
果たして手をつないで歩くだけの散歩なのだろうか。
7月19日(土) ~ 20日(土) 、可変時間
川口理央、『アーマーガサキングα 影と光 破壊と再生II』、パフォーマンス、2025年
三和市場の中で、エプロンをつけたアーマーガサキングαが破られたスイカを集めていく。三和市場を掃除する姿は、破壊された街を修復するようであり、食べ物を救い出すようである。取り上げたスイカはみんなで食べる。暴力的に地べたで割られたスイカも、取り上げて念入りに洗ってみれば、食べることができるものになる。
怪獣シアター
7月19日(土) 15:00~20:00
ゲバルト団体、『凡人による凡人』、パフォーマンス、2025年、15分
出演者 : 平居香子、アレクサンドル・タルバ
日本で初めてポストモダンダンスを踊った、と言われる厚木凡人の作品を、われわれゲバルト団体がリエナクトメントします。
黒田健太、『Day say so, - 日々は語る』、身体動作/パフォーマンス、2025年、30分
今ここから直立してお声がけします、声明文。こちらは不用品回収です。ご不用になった自転車、バイク、三輪車、ベビーカー、バッテリー、ワープロ、USBメモリー、背骨、臓腑、ご家庭の不要なものも整理いたします。クリーンクリーンクリーン 夕方からは雷雨の予報です ぴかぴかがふります 傘を持って出かけましょう 週末はきれいにしています 雨に濡れても大丈夫です 外はあちらです 見えませんか 心配なさらず、また復活しますから 。
有吉玲、『詩を食べて劇に戻す』、パフォーマンス作品、2025年、時間170分 (コアタイム110分+エキストラタイム60分)
出演者 : 有吉玲、平居香子
音楽 : Awtul N Lexla
入退場自由の前半60分と途中入場不可の後半50分によるコアタイム、劇場外でのエキストラタイム60分の二部構成。
パレスチナから来た言葉を、2025年の尼崎で新たに生みなおし、アクティビズムのための道具づくりとしてアートに移植する試み。具体的には、紙芝居、ノイズ音楽、西瓜割り、日記、朗読、共同執筆など。
7月20日(日) 16:00~20:00
ゲバルト団体、『凡人による凡人』、パフォーマンス、2025年、15分
出演者 : 平居香子、アレクサンドル・タルバ
日本で初めてポストモダンダンスを踊った、と言われる厚木凡人の作品を、われわれゲバルト団体がリエナクトメントします。
黒田健太、『Day say so, - 日々は語る』、身体動作/パフォーマンス、2025年、30分
今ここから直立してお声がけします、声明文。こちらは不用品回収です。ご不用になった自転車、バイク、三輪車、ベビーカー、バッテリー、ワープロ、USBメモリー、背骨、臓腑、ご家庭の不要なものも整理いたします。クリーンクリーンクリーン 夕方からは雷雨の予報です ぴかぴかがふります 傘を持って出かけましょう 週末はきれいにしています 雨に濡れても大丈夫です 外はあちらです 見えませんか 心配なさらず、また復活しますから。
黒田典子、『21世紀アヴァンギャルド・テント芝居の章』、映像作品、2025年、60分
テント芝居は、唐十郎の状況劇場に始まる。それまでの新劇を中心とした劇場の壁を破り、野外へ、テントで各地を移動しながら、その旅先に異空間を現出させた。さらに芝居の中で、テントの幕を開け、外の現実と虚構とが融合する虚実皮膜の世界を創出した。新宿梁山泊「唐版 風の又三郎」韓国公演、パレスチナキャラバンの「アザリアのピノキオ」公演を通し、テント芝居の原点を探る。
飯沼洋子、『Effeuillage』 (エフイヤージュ)、パフォーマンス、2013年~2025年
出演者 : 飯沼洋子、アレクサンドル・タルバ
道端に落ちているプラタナスの樹皮は年輪という時の領域から離脱し、不在と空虚を示している。それらを元に〈樹皮―皮膚〉という一枚の皮として再構成し、着衣する。皮膚の下にいる不可視の存在を探るため、少しずつ鱗を剥がし、己の空虚に触れてみる。《Effeuillage》はこのような行為を捉えた写真作品である。本展覧会では新たにパフォーマンスでの展示を試み、複数の空虚が互いに触れ合う動作において、生きている輪郭の現前化を試みる。
*「一部刺激の強い表現が含まれます。」
染織工房 tonari 運営
7月26日(土)~7月27日(日)
ゲバルト団体、『ゲバルト・スナック』、2025年
出演者 : 佐野未帆、アーサー・カナワティ、平居香子、アレクサンドル・タルバ、他
協力 : 北川星子
孤独の夜
反乱の夢
語り合い
酒の杯
笑み注ぐ友